【海外留学報告】ザンビア大学(ザンビア)宮岡 慎一

医学部医学科 宮岡 慎一
留学先:ザンビア大学(ザンビア)
実習期間:2019年6月17日~7月12日(4週間)
留学の種類:北海道大学医学部医学科(医学教育・国際交流推進センター主導)トライアル派遣
留学時の年次:6年次

1.はじめに

皆さんは日本と韓国の違いについて、どれくらい挙げることができますか?あるいは日本と中国の違いでも構いません、だいたい同じような国でしょうか?中国とインドはどうでしょう、互いに隣接していますが、似ている国でしょうか?日本とモンゴルはどちらもアジアなので、だいたい同じようなものでしょうか?カザフスタンってよく知らないけどアジアだからまぁ日本とか中国と似たようなものだ!と皆さんは思いますか?

アフリカには50以上の国がありますが、それぞれどこにどのような国があってどのような人々がどんな生活をしているのか、この留学の話が持ち上がるまで正直、自分はほとんど知りませんでした。「アフリカ」という言葉を聞いて思いつくことと言えば、大自然、原住民族、鉱物資源、そして貧困にあえぐ子供たち。そんなイメージをアジアについで世界で2番目に大きな大陸全体にあてがっている自分にとって、4週間のザンビアでの実習に従事することができたのは本当に幸運であり、今回の留学を通して自分にとって未知の大陸である「アフリカ」に対する印象、考え方が大きく変わりました。臨床実習の一環として、本学から学部生をサハラ砂漠以南のアフリカに派遣するのは(少なくとも僕が聞いた中では)初めてということもあり、だからこそ今回の留学は自分にとっても、そしてきっと北大医学部医学科にとっても重要なものであったと考えます。僕たちの今回の経験やこのレポートが、今後海外での実習を考える学部生のみならず、今後アフリカとの交流を増やしていこうと考える先生や職員の皆さま方にとって参考となれば幸いです。

【実習を検討するにあたって】

おそらくこのレポートを見ている学生の皆さんの中にはザンビア大学UTHでの実習を医学科6年次に考えている人もいることかと思い、この項を追加しました。実習が全て終了した段階での自分の意見ですが、他の様々な留学プログラムに比べて今回のザンビアでの臨床留学のハードル(難易度)はやや高いかと感じます。理由は以下の通りです。

  • 経済レベル的にはlow income countryからギリギリmiddle income country に格上げになった国で、強く不便に感じることは少ないにしろ、途上国での生活を経験したことがない場合は生活に不安を感じることがある可能性が高い点。
  • 自分が参加した複数の臨床実習と比べて、UTHでの実習は自分で実習内容等を交渉していくスタイル(逆にいうと、先方から事前に何かを準備してもらったり、といったことは期待できない)なので連絡や交渉等を行えるある程度の英語力が必要がある点。
  • 特に留学生として特別に扱われることはなく現地学生と同様に質問や発言の機会が飛んでくるので、ある程度医学英語を習得していないと苦しく感じる場面が多い点。
  • そしてザンビアの6~7月は真冬かつ乾季ど真ん中で朝・夜がとても寒いです…。

2.UTH臨床留学までの手続き・準備

【手続き開始まで】

最終学年になったら積極的に海外で臨床実習を行おう、そう考えていた自分は当初、かつて1年間休学をして交換留学を行った米国での臨床実習を検討していました。ただ当時の臨床留学を担当してくださっていた医学教育・国際交流推進センターの村上先生より、近年の先進国の医学生は皆アフリカへ行く、という話を伺っていたこともあり、アフリカでの臨床実習をする機会はないだろうか?ということも常日頃より考えていました。そんな折、同様に本学から派遣された同級生の千葉がネット上にあったザンビア大学医学部の臨床留学プログラムの申し込みフォームを見つけました。ザンビアおよびザンビア大学は本学獣医学部が長年にわたり強固な信頼関係を築いてきた実績があり、また現地にも北海道大学のオフィスがあるということから、交渉の余地があるのではないか?ということで交渉が始まり、本学オフィスおよび現地オフィスの職員の方々には本当にお世話になりながら、無事臨床実習の受け入れが8月初旬に決定しました。

なお留学手続きを始めるにあたり、以下の点に留意するよう現地オフィスの職員の方々から連絡をいただきました。

  • UTHは三重大学や藤田保健衛生大学など複数の日本の大学から毎年学生を受け入れている実績があるため、受け入れ態勢についてはある程度整っていることが予想されること
  • 本学とザンビア大学の間には大学間協定があることから実習費は無料であること
  • 実際のやりとりはザンビア大学の国際担当部署と医学部担当との間で行われること
  • 大学間協定には学生への宿舎提供に関する大学の義務が明文化されていないため、現地での宿泊費は学生の負担となる、ただしなるべく近くて安全かつリーズナブルな宿泊先について現地オフィスが斡旋することは可能であること
  • 実際に本学での派遣が確定した場合はApplication formおよび成績証明書の提出が必要だということ

よって上記の点を踏まえて、手続きを開始することとなりました。

【実際の手続きの詳細】

実際の手続き開始に際して、先方より送られてきたA4約1~2枚のApplication formを埋めていくことになります。Word上で必要事項を自分で埋めた上で本学医学部長のサインを取得し、先方に提出します。正直、どのように記載すれば良いのかわからない部分も多かったのですが、先方は学部長のサインがない段階での内容の吟味は難しいということであり、ひとまず自分のできる範囲内で最大限に丁寧かつ誠実にapplication formの質問事項に回答し、国際交流推進センター経由で医学部長からのサインをいただいた上で英文の成績証明書と共に先方へ提出しました。
結果的に提出は留学開始の前年の11月でしたが、実際はメールで提出した翌日に受け入れ許可のメールが来ました。かなり気合を入れて(気を遣って)フォームを完成させたにも関わらず一瞬でacceptance letterが送られてきたため、やや拍子抜けな部分もありましたが無事受け入れが確定しました。

※手続きが大変シンプルに見えますが、本当にこれで全てです。自分はその他の様々な臨床留学や留学を経験しましたが、これほどあっさりと簡単に留学が決まったのはもちろん初めてでした。繰り返しになりますが提出した書類はcompleted application form with the sign of Dean とTranscript の2点のみです。
なおこの後、細々とした手続きに入りますが問い合わせをメールでしてもスムーズに返信がもらえないことも多かったので、まず以下の内容を予め頭に入れておくと良いと思います。

【宿泊先の決定について】

先述の通り、宿泊施設については基本的に自力で調達する必要があり、結果的には現地オフィスで今回の留学を調整していただいた成澤先生より紹介いただいた「Long Acres Lodge」という施設に一泊300クワチャで宿泊を決め、事前に成澤先生にLong Acres Lodgeに連絡を取っていただき28日分の宿泊予約をしていただきました。支払い等は現地到着時に現金で行いました。(クレジットカード決済は可能と聞いていましたが、Receptionでの読み取り機故障のため結局現金払いとなりました)

こちらのLong Acres Lodgeですが国営の宿泊施設ということもあり断水や停電が少なく、また実習先のUTHからは現地のシェアバンで5~10分で着く、歩いて数分のところにケバブ屋さんや24時間空いているスーパー、ATMなどがあるという立地が売りです。朝食付きで通常であればWifiもあります。自分の場合、難点はお湯の供給が不安定であり、タイミングが悪いとお風呂に入り損ねる点やシャワーが無いので時々出るお湯を桶に汲んでかぶる必要があった、という点です。また滞在期間中の前半3週間はwifi がなかったためMobile Dateでしのいでいました。(通信料は5GBで100クワチャ、12GBで200クワチャ、32GBが400クワチャでした)

宿泊施設については特に規定がないので、正直様々なオプションがあるように感じます。1泊300クワチャはリーズナブルにも聞こえますが、1ヶ月泊まり続けるとそこそこの額になりますし、前半3週間はWifi無し、シャワー無し、お湯が不安定、暖房等は無し(留学期間のザンビアは冬・乾季のど真ん中で朝・夜は大変冷え込みました(4. 気候を参照))であったため、個人的には値段の割に満足できない部分はありました。UTHから距離はありますが、旅行者向けのHostelであれば上記の問題は全て解決しますし、かつ毎日タクシー通学をしたとしても割安です(当初の予定でしたが、現地オフィスと相談の上、安全策を取るということで却下された案でした)し、現地の部屋を1ヶ月借りるのも高くとも月100 USD以下とかなり安く済むうえ、決して設備は劣らないことから検討するに値すると思います。またその他の海外から来たelective生が利用している宿・寮もあるようで、同様にずっと安い値段で宿泊でき、他の留学生とも交流でき、設備も良い可能性があります。是非色々な可能性を検討してみてください。Long Acres Lodgeは実績はありますが、値段の割に快適だとは正直言えませんでした。

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【Rotation 先の決定について】

先方に問い合わせた際、以下の4つより選択する旨の返信をいただきました。

  1. Surgery
  2. Internal Medicine
  3. Pediatrics and Childcare
  4. Obstetrics and Gynecology

当初、自分は他の臨床実習の経験から滞在期間全てを一つの場所で過ごすのではなく、様々なものをできる限り見学する方がより多くを学べると感じていたため、各診療科に1週間ずつ見学することができないかを打診しました。しかし現地では1診療科で最低2週間以上の実習期間が必要という規定があり4つの診療科全てをrotateすることはできなかったため自分は2. Internal Medicineおよび3. Pediatrics and Childcareを選択する旨を先方に伝えました。
ただそこから実は返信はなく、詳細は後ほど記載しますが結局現地で初日に改めて希望を伝えて実習診療科を決定したため、事前に伝える必要は結果的にはありませんでした。

ちなみに例えば2. Internal Medicineといった場合、その中でHematologyやGastroenterology、Infectious DiseasesなどがUnitごとに分かれているため、例えばInfectious Diseasesが学びたい場合はInternal Medicineでの2週間を選択し、その上で実際にInternal MedicineのOfficeにて学びたいUnitを決めるよう指示されるため、その時点でInfectious Diseasesを選択する、という形になります。1. Surgeryやその他も同様です。全て現地で決まります。事前には決まっていません。

【ワクチンおよびマラリア予防について】

特にワクチン接種歴の提出は求められませんでしたが、海外渡航時に必要となる一般的なワクチン(A型・B型肝炎、破傷風の他、髄膜炎菌や黄熱病など)については僕は既に接種済みでした。今回の留学をするにあたり、ポリオおよび狂犬病のワクチンについては接種しておりません。またザンビア西部はマラリア蔓延地域ではありますが、実習を行う首都のルサカに滞在するぶんにはマラリア感染へのリスクは低く、マラリア予防薬も特に服用しませんでした。ちなみに処方箋があれば現地でも予防薬の購入が可能です。

【VISAについて】

先方に問い合わせの結果、滞在が30日以内の場合は入国時に取得できる短期滞在VISAで構わない旨を返信いただきました。飛行機でルサカに到着した場合、ザンビアおよびジンバブエに期間内であれば何度も出入国ができるKAZA VISAというものが50 USDで取得可能です(2019年6月現在)。おそらく現地渡航の際はザンビアで最も有名な観光地であるVictoria falls (ザンビア側の町はLivingstone)に行かれるかと思いますし、その際にZimbabweに行くことも可能なのでKAZA VISAの取得をおススメします。

【渡航日の送迎について】

事前に先方の担当者の方から、到着時の送迎が必要かどうかの問い合わせがあり、今回は航空券を事前にメールで送り、送迎をお願いしました。空港は街中からやや離れているため自力で行く場合は基本的にはバスまたはタクシーで行くことになるかと思います。自分が到着した時は30分程ドライバーが現れず自力で行こうか考えていたら来てくれたということもありますが、送迎自体は無料でdoor to doorで宿泊施設まで連れていってくれるので次回以降も可能であればお願いしてみると良いと思います。

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コラム:中国からの留学生?
UTHで実習を行っている学生は大きく分けると以下の3つに分けられます。

  1. 現地の学生(University of Zambiaおよび国で唯一の私立医学校であるAPEX)
  2. 海外からのelective 生(自分達、あるいは北米、ヨーロッパ、オーストラリアなど)
  3. 中国で5年医学を学び、卒業までの最後の1年間をUTHで臨床実習として過ごす学生

この中でも大部分を占めるのが1および3ですが、特に3にあたる学生がとても多かったため、少し補足をします。日本でも例えばハンガリーの医学部に行っている学生がいる、といった話を聞いたことはないでしょうか?同様に、現在アフリカでは高校卒業後に中国の医学部に進学し、中国にいながら英語で医学を学んでいる学生が数多くいます。彼らの出身国は南アフリカやザンビアでしたが、皆座学までを中国で終え、実際に患者とコミュニケーションを取る必要のある臨床実習は(語学の関係で)中国ではできないため、卒業までの最後の1年間をUTHで行うというプログラムに沿って実習をしています。後述する「学生のやる気」の理由の一つとも考えていますが、彼らにとってはずっとできなかった臨床実習を行い、座学で学んだ知識が実践できるまたとない1年間であるため、現地の学生以上に力を入れて実習に参加しているように感じました。なお彼らは実習終了後に中国に帰国し、卒業試験をパスした上で再度アフリカに戻って来て医師として働くという選択肢を取るそうです。
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3.UTHでの臨床実習

【実習初日】

実は実習初日の朝を迎えても、初日の集合時間や集合場所に関する明確な連絡をもらうことはできませんでした。よって初日は北大現地オフィスの職員の方経由で、ザンビア大学の国際部署に直接電話で問い合わせ、国際部署から病院の担当部署の問合わせ、病院の中のassistant secretaryの部屋に行くよう指示を受けました。
実際に行ってみるとassistant secretaryと一言かわす時間があり、その後秘書さんを通して臨床留学開始の手続きを行います。「Fujita は聞くけど、Hokkaidoは聞いたことがない」と言われながら、400KW/weekの実習費を銀行で払ってそのレシートを持ってくるよう指示を受けました。以前より実習費はいらない旨を知らされていたため、改めてその場で相談すると国際担当部署に連絡が行き、30分ほど待ったのち「実習費は払わなくても良い」こととなり、「ではどの実習先にしますか?」と改めて聞かれました。この時点で事前に伝えていた診療科が伝わっていないことは明らかだったので、改めてInternal MedicineおよびPediatrics and Childcareで実習を行いたい旨を伝えると、「どちらを先にする?」という話になり、先の2週間をInternal Medicine、後の2週間をPediatrics and Childcareで実習を行うことになりました。
かなり冗長に書いてしまいましたが、言いたいことは以下の通りです。

  • 事前に伝えた内容は特に伝わってない。
  • 協定があり実習費が無料になる自分達は特例で、むしろ協定のない多くの海外の学生が400KW/weekを払って実習をしている。言い換えるとお金さえ払えば実習を行える可能性が高く、海外からの学生の受け入れには非常に寛容である。
  • 事前に自分達の実習について何かが用意されているわけではなく、現地の学生達が実習している中に、あるいは上の先生方の業務に自分から混じっていくスタイルである。各診療科もそういった受け入れ方法に慣れており、事前連絡無しでいきなり混ざっていても特に何も言われず現地学生と同じように扱われる。

というわけで上記のやりとりを全て終了した時にはお昼になっていたこともあり、実習は翌日より始めるよう指示され、初日は終了でした。

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コラム:実習中の服装について

内科の感染症科については比較的自由であり、現地学生もT-shirtの上から白衣を羽織ったりスクラブを着ていたりしており、あまり厳しい制約はない印象でした。
一方で小児科はとても厳しく、ワイシャツにネクタイ、髭は整えて実習に臨むことが求められました。(ただ僕は留学生ということもありスクラブの上から白衣を羽織る形で実習に参加していて注意等されることはありませんでした)靴は本来的には革靴が良いと思いますが、途中からはスニーカーに切り替えて、特に問題となることはありませんでした。
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【Internal Medicine : Unit 3 (Infectious Disease)】

Internal Medicine の予定は以下の通りです。

各Unitが何を示しているのか、はっきりと書かれたものを見つけることはできませんでしたが、自分が実習を行ったUnit 3 はInfectious Diseaseであり、よってUnit 3のスケジュールをもとに各実習内容を説明していきます。

• Clinic Day

上級医、研修医の先生の内科一般外来を見学します。英国の実習時と同じように、患者の呼び入れなどは学生がしています。僕が見学を行った際は診察医2人に対して学生が自分を含めて4人でした。上の表からもわかるように、各Unit(専門科)が交代で総合内科外来を回しているような状況で、自分がrotateしていたUnit3の専門とする感染症のみならず、栄養失調や内分泌など様々な患者さんが受診していました。
受診する際はまず始めに看護師よりバイタルチェックが行われた上で待合室にて待機となりますが、マラリアの疑いがある場合などは迅速診断(Rapid Diagnostic Test : RDT)などが予め行われます。過去の胸部X線のデータなどは病院で管理されていないので、患者の多くが持参し来院していました。
実際に見学した症例としては、アジソン病、マラリア、結核の薬の調整などあまり多くはありませんでしたが、指導医の先生はその都度ごとに学生に質問をして、教育の機会を作っていました。自分が主についたのは卒後2年目あたりの日本でいう研修医にあたる先生でしたが、日本の研修医同様、仕事を覚えたてといった様子で学生の教育にまでは手が回らず、やや置き去りにされてしまった(こちらから質問するもあまり快く答えてくれない)ことは苦い思い出ですが、国が違えど皆、一から勉強して医者になっていくという意味で日本もアフリカも変わらないことが実感できてよかったです。

• Admission

日本でいう日当直のようなもので、救急外来で朝8時(こちらのworking hourは8:00-17:00です)から働きはじめ、翌日の朝まで内科疾患全般を診察し、初期治療や入院等の対応をします。4年生から6年生までの学生が同様のシフトに入っており、主にその場で入院となった患者の詳細な問診および身体診察(Clerking)、採血等の簡単な処置をします。午後2時からは毎日、その日のAdmissionを担当するUnitの指導医が教育回診を行い、約10-20名の学生が各患者の前にごった返すような回診が夕方まで行われます。学生はその回診に積極的に参加するのみならず、自身の希望・余裕に合わせて先ほどのClerkingの結果を指導医にプレゼンをすることができます。

基本的には自主性に任されているため、日本であれば好んでプレゼンをしたいというやる気のある学生はそれほど多くはないと思いますが、僕が実際に参加した際は、学生は皆やる気に満ち溢れ次々と運ばれてきた患者に対してclerkingを行っていました。(自分は午前中で4人 clerkingした、という学生がいたり、同じ患者を別々な学生が重複してclerkingしていたりもしました)理由として、①評価がclerkingの質・量に左右され、決して甘くはない、②全て紙カルテであり、事前に時間をとって学生がまとめたプレゼンを聞くことで指導医は大量の書類に目を通す必要がなくなるため、時間が限られていることから指導医も学生のプレゼンを元に診断や治療の話を進めることも多く、チームの一員として貢献している実感がある、などが考えられましたが、その他に(このUTHの実習生全般的に言えますが)中国で医学を学んだ学生にとってはまたとない1年間であること(上述、コラム参照)などが考えられました。

外来同様、受診する患者は多種多様です。印象的であったのはマラリア、および抗マラリア薬の副作用で低血糖から意識障害で運ばれてきた患者、おそらくstrokeで頭部CTが必要だがその費用を払えず、fundraisingをすることになった家族、Ⅰ型DMからDKAでショックで運ばれてきた患者、いわゆる3Dが揃っているビタミンB3欠乏の患者、重症な肺炎で入院が決まっているにも関わらず人手不足と受け入れるベットがないため震えながら半日車椅子で廊下に放置されていた患者、誤嚥性肺炎の高齢女性に対してNG tubeから家族お手製のおかゆをシリンジポンプで流し(押し)込んでいる様子、常にベットの大半を占める結核患者、そしてその原因がほとんどHIVであること、結核・HIV・マラリアに関しては(曝露数からして当然ながら)はるかに日本の医師よりも詳しい学生達、UTHでは人工心肺を回した循環器の手術が行えないため南アフリカで手術を受けた女性、結核に並ぶほどなぜか多い心不全患者(高血圧がそもそも原因?)など枚挙に暇がありません。短い期間ではありましたが、何かを深く学ぶというより、深く学ぶためのきっかけが作れたという意味で大変充実した当直実習でした。

• Post Admission

前日に当直をした後は、指導医のスケジュールに応じて朝3時、および朝5時あたりからpost-admission roundがあり、夜勤帯で入院した内科領域の患者の総回診を行います。先ほどの教育回診同様、学生によるプレゼンテーション等も行われ、よって担当の学生はこの回診に備えて夜中もプレゼンテーションの準備をする必要があります。このpost admission roundまでが義務ではありますが、僕が参加した回は回診が長引き、そのまま日勤帯の通常業務である後述のMajor Roundに突入することもあり、指導医・学生ともにとてもタフだな、とへとへとになりながらついて行ったことを覚えています。

• Major Round

Major Roundは通常の病棟回診であり、朝9時から自分のUnitの担当する患者を総回診します。日本と比べて衝撃的なのは扱う疾患のデモグラフィーなどだけではなく、例えば3番ベットと4番ベットの間に3x、3xx、3xxxとして新たな患者を押し込んでいる点や、紙カルテ管理が大変ずさんであり問診をしようにもカルテの所在がわからないことが多々ありカルテ探しに時間が取られたりすることでした。(そして現地の看護師・医師がカルテ探しに時間がかけることを厭わない点も非常に不思議でした)一度、回診で回る予定の患者全てをリストアップし、順番に紙カルテを集めて並べようと学生や看護師にお願いをして取り組みましたが2時間かけて70%ぐらいしか集まらず断念しました(笑)。施されている医療自体を検討する前に、医療を施す環境整備という意味で大きく伸びしろを実感する機会がありました。

そしてここでも先ほどのAdmission, Post-Admission同様、学生は事前に患者をclerkingすること、およびそのプレゼンテーションが求められます。また教育的な側面も強く、常に指導医より質問が飛んできます。扱っている疾患としてはやはり結核やHIV関連の疾患がとても多く、それらの感染症により原疾患が悪化したということで感染症以外の疾患を治療している例も多かったです。その他、髄膜炎や有鉤条虫による脳膿瘍なども見学、Clerkingおよびプレゼンテーションを行うことができました。また今回は乾季ど真ん中での実習ということで経験することはありませんでしたが、雨季に発生するコレラの流行に関しては病院および街の至る所に注意喚起のポスターが張ってあり、時期によっては極めてcommon diseaseであるというお話でした。

【Pediatrics and Childcare】

後半2週間は小児科での実習を行いました。実習初日同様、新しい科で実習を行う場合は再度assistant secretary のオフィスにて手続きをする必要があります。内科とは違い、小児科全体を管轄しているような部署はなかったため、後述するスケジュール等は全て学生から聞いた内容をまとめたものです。内科同様、臓器(専門)別にUnitがわかれており、1~3週間ごとに各UnitをRotateする仕組みです。実習期間が2週間と短いため、何か一つをじっくり学ぶのではなく、短期間でできるだけ多くのものを見学することを目標としたため、最初の第1週をMalnutrition およびHematology and Oncology、第2週目をGeneral Pediatrics およびNICUで過ごしました。

• Malnutrition

日本ではあまり見ることのない栄養失調の子供たちが治療を受けている病棟です。主に「重症」と「軽症」の2病棟に別れており、重度の栄養失調で運ばれてきた子供たちはまず生命の危機から脱するための治療を「重症」病棟にて受けます。その後、次第に体重が回復すると目標は退院および再発の予防へと切り替わり、同時に「軽症」病棟へ患者は移動します。重症の栄養失調として運ばれてくる理由は多々ありますが、例えば未治療の口唇口蓋裂といった先天奇形が放置されている例であったり、重度の感染症など医療へのアクセスが乏しいことによる栄養失調が多い印象でした。

事前に想定していた、いわゆる貧困による栄養失調という症例もあるにはありましたが、想像していたよりは少なく、どんなに貧しくとも最低限の食べ物はある、という考え方の方が正しいようです。治療はいたってシンプルで、WHOの発行するtarget weightを元に、人工乳にて少しずつ体重の回復を図ります。ただ患者である子供たちは皆、普段以上に脆弱な健康状態であるため、軽微な発熱や普段と異なる様子などを注意深く毎日何度も観察することが主な業務でした。「軽症」病棟では、子供の体重回復に加えて、栄養失調の背景にある問題に介入をしていきます。先天奇形に対しては適切な治療やその計画を相談する、社会的(経済的)な問題であれば地域の保健所として機能している施設へのコネクトや患者指導(家族への栄養管理教育等)が行われています。「Treatmentという意味ではミルクをあげているだけだが、真に医者らしいことをしている」という指導医の言葉はとても印象的でした。

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• Hematology and Oncology

海外では一般的にHematologyとOncologyが一緒になっているケースをよく見かけますが、ザンビアも植民地時代の名残かイギリス式の医学の枠組みで実践されています。もちろん白血病やリンパ腫といった類の疾患もありましたが、圧倒的多数かつ印象的であるのは「鎌状赤血球症」です。主にアフリカ系の人種にみられる疾患で、マラリアに対して耐性があることは良く知られており、外来では当直時に脾腫、(血管の塞栓による虚血からの)疼痛などで運ばれてくることが多いそうで、当直をしていれば必ず何回かに一度は遭遇するといったcommon diseaseです。

金曜日に、「鎌状赤血球症を見たことがないなら、来週月曜日に調べてどんな病気か教えてね」という宿題を指導医に出されましたが、月曜日よりその医師は学会で不在でした…。その他、実習期間が短く、治療として実際に見学したのはヒドロキシカルバミドを用いた鎌状赤血球症の治療や輸血等で、抗がん化学療法や移殖といった治療が実際に行われているか、日本と異なる点があるかなどを見る機会はありませんでした。

• General Pediatrics

その他のUnitに属さない様々な疾患は基本的にはこのGeneral Pediatricsで治療されます。扱っている疾患は様々で、Ⅰ型糖尿病や結核性髄膜炎、水頭症や髄膜炎、てんかんなどがありました。先に実習を行った内科-感染症科と同様で、こちらでも子供あるいは両親へのclerkingおよびそのプレゼンが学生のタスクとして課せられます。大人へのclerkingですら既に3桁以上clerkingをしている現地学生には遠く及ばないのに、いわんや小児にclerkingが上手にできわけがなく、Ⅰ型糖尿病の患者に対して行いましたが現地学生に助けてもらってばかりのさんざんなclerkingでした。

日によってスケジュールが異なり、ある時は教育セッションが14時から開催され、学生には事前に担当症例に対する質問を考えてくるよう指示があり、その質問に答えながら小児の身体診察の取り方(僕の時は神経診察および腹部診察)のteachingがありました。また外来見学もあり、小児科の教授によるてんかん外来を見学しました。外傷によるてんかんが数件あり、交通事故が多いからこそその後遺症に苦しむ子が多い事実を感じることができました。また小児の救急外来でのteachingに参加した際はHIVについてそのウイルス学から臨床症状、治療などについて約2時間半カンペもホワイトボードもハンドアウトも無しで説明が行われ、指導医および学生のHIVに対する圧倒的な知識に驚くこともありました。また発熱・皮疹で受診した小児に対し、どのような問診を行うかというのを学生30人一人一人に当てていくと言ったteachingや、毎週2回開催されている朝レクチャーでは小児結核および小児発育不全について、上級医より1時間程度のスライドを用いたプレゼンを受ける機会がありました。

• NICU

ブログ等を拝見すると既に先人たちが多く経験してきたように、NICUをエヌ・アイ・シー・ユーと発音しても「わからない」あるいは「It’s ニキュー」と言い直されてばかりいた、”ニキュー”へは半日ほどですが、General Pedsの先生に頼み見学をさせていただきました。NICU自体はとても広く、集中治療が必要な子供たちから、比較的軽症な子供たちまでがいっぺんに管理されており、あちらこちらと奔走している医者をみると、人手が足りないのでは?と感じてしまう場面が多々ありました。
新生児科の医長の先生が卒後2年目の医者にIntraVentricular Hemorrhage を頭蓋内エコーで評価するteachingに混ぜてもらい「こちらのエコーや保育器はJICAから寄贈されたものだけど、どれもすっかりふるくなってしまって使い物にならない」と言われ、見渡せばNICUにあるほぼ全ての機器にJICAのロゴが振ってありました。後半は軽症な新生児の回診をshadowingしましたが、一人の医者が20以上の子供たちを一人一人回診しており、とても日中には終わらないのではないかと感じたとともに、新生児一過性無呼吸となっている赤ちゃんが放置されていた状況に一人で動揺していたりしました。

日本の新生児科での実習を僕自身はあまりしていないため比較して何か物事をいうことはできませんが、決まった時間には同じガウンに着替えたお母さん方が一斉にNICUに入って来て母乳をあげるシーンがあり、またそれを看護師や医師が雑談しながら指導している様子も見学できました。そうじて医師及び看護師がせわしなく仕事(回診・カルテ記載)をしている様子が印象的でした。

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【全体的な感想】

先述の通り、何かを深く学ぶには2週間×2という期間は短すぎるため、できる限り様々なものを見学・体験し、今後の学習のきっかけを作るという目的にそって、そもそも決まったスケジュールや先方の準備がないこともあり、各方面にお願いしてまわりながら様々な場所で実習を行いました。細かな感想や違い等は上記に記した通りですが、その中でも特に全体を通して印象に残ったのは以下の点です。

  • 結核、HIVおよびそれらに関連する疾患を浴びるほど経験することができる。
  • 完全にネイティブな英語環境下で実習・医療が可能
  • 学生の裁量が多く、またHands-onのトレーニング(Clerkingは顕著、その他の手技も)は非常に充実しており学生が完全に医療者としてチームプレーの一旦を担っている。
  • 医者(および恐らく看護師も)の労働環境が極めて悪い(非効率・人材不足)
  • 全体的なインフラ整備は(日本と比べると)整っておらず、例えば結核への感染対策はほぼ皆無である(指導医曰く、病院に来たら(居たら)100%結核に暴露されるから、できる限り早く退院させるそう)
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4.現地での生活について

›気候・服装

僕が訪れた6月~7月はザンビア(南半球)では真冬で最も寒い時期であり、気温は朝・夜は10℃以下にまで下がる一方で、日中は22-24℃程度になります。事前に寒いとは聞いていたので北海道でいう秋服のようなものを持って行きましたが、もう一段寒い印象でした。パーカーやスウェット、ユニクロのUltralight jacketよりもう少し厚めのジャケットなどを日本から持って行くことをおススメします。ただ滞在地のルサカはショッピングモールも複数あり、また地元のマーケットに行くと海外から寄付された服が道端で信じられない価格(厚手のコートが300円とか)で販売されているので現地で調達することも可能です。このような服は朝・夜は必要ですが、日中はT-shirt一枚でも大丈夫なほど暖かくはなり温度調節にやや工夫が必要だと思います。現地のザンビア人は(彼らにとっては真冬なので)昼間の20℃以上ある中でも厚いコートを着て街を歩いている様子が印象的でした。

またこの時期は乾季のど真ん中であり、少なくとも僕が滞在した1ヶ月の間で雨が降ることはありませんでした。曇りの日も数日しかなく、基本的にはいつも快晴で空気はとても乾燥しています。僕は日焼け止めなどは使いませんでしたが、帰国時に「焼けたね」と何度も言われました。日差しはとても強いので日焼け止めを持参し、使用することをおすすめします。また乾燥で肌が荒れるので必要な人は保湿クリームなどがあった方が良いと思います(ワセリンが現地で手に入りますが)。

›物価

ザンビアの通貨はクワチャで1クワチャ=8円程度です。ザンビアに限らず、アフリカ南部の物価はその他の途上国と比べるとやや高い印象です。そして現地人曰くザンビアは衣類は安く、食事と宿泊施設が高いとのことでした。食事は超ローカルなNshima(後述)で15-20クワチャ、宿泊施設の夕ご飯や近くの中国料理の食堂で一食あたり50-60クワチャ、いいレストランでは100-150クワチャ程度です。公共交通機関は乗り合いタクシーが10クワチャ前後(宿泊施設から病院、あるいはTownと呼ばれる街の中心地まで行けます)、タクシーが街中全体で40-60クワチャで、LusakaからLivingstoneまでの長距離バスが200クワチャです(所要時間8-9時間)。衣類は先述の通りTownの道端で買えばかなり安く済みますが、外国人・富裕層向けのショッピングモールでしっかりしたものを買おうとすると日本とそれほど変わらない金額となります。水は500mlで5-10クワチャでした。

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›食事

ザンビアの伝統的な食事はNshimaです。トウモロコシの粉末に水を加えて作ったもので、これを少量ずつ取って手でこねながら、野菜や肉、魚など様々なおかずと一緒に食べます。(余談ですが、小児科栄養失調グループにいたころ、お母さん向けに作られた子供の栄養に関するパンフレットを見ると、栄養が全てNshima何杯分かでcountされていました。Zambia人のソウルフードです。)

なおこのNshimaですがほぼ同様なものがアフリカ全土に見られ(やや固さなどに違いがあるそうですが)、UgandaではUgali(とても固く、ザンビア人がNshimaだと思って食べようとして指を痛めたという笑い話がありました)、ジンバブエではSadza、ボツワナではPapaなどと呼ばれていましたが全部同じものでした。(Wikipedia のUgaliのページがおもしろいです)付け合わせのおかずは野菜がデフォルトでついてくることが多く、そこに豚肉や牛肉、揚げた川魚などがついてきます。またPorridgeと呼ばれる(直訳すると”おかゆ”です)お米に砂糖やミルクを加え、バナナなども少量加えて煮込んだ料理もよく食べられており、朝ごはんの定番です。

またT-boneという骨付き肉も有名で、豚や牛を骨付きのまま水平あるいは垂直に切断し、骨の断面が見える形でserveされます。現地でお世話になった北大獣医学部の先生曰く、日本など先進国ではBSEやその他の感染症予防のためこういった調理法は禁止されているらしく、よってこちらもザンビアでしか食べられない料理だと思います。

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また旧イギリス領であるため、イギリス料理も様々なところでみることができます。現地ではコーヒーよりもお茶(ルイボスティー、セイロンティーなど)がよく飲まれ、レストランでは朝ごはんはFull British Breakfastをよく見かけます。病院での昼ご飯としてソーセージやシチューが入ったpieを買うこともできますし、他のスーパーやガソリンスダンドでも軽食として食べられています。Fish and ChipsよりChicken and Chipsがメインで、middle income country あるあるだな思いながら食べてました。

またその他、ルサカはザンビアの首都ということで海外の様々な料理を食べることも可能でタンザニアのPilauと呼ばれるピラフのような料理(中央・南アジアやトルコなどでもよく食べられる)やエチオピアのInjeraを食べた他、中国料理を食べられるレストランも多数ありました。

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›移動

移動の方法はルサカ内の移動であれば乗り合いバンや普通のタクシー(白タク:登録されたものではない)、バスがメインです。

乗り合いバンはバス停や路線図がわかりやすいわけではないので最初は困惑するかもしれませんが、ザンビア人は優しいので聞けばいつでも丁寧に教えてくれ、信頼もできます。(というより口頭での伝達がデフォルトとなってる気がします)街を歩いているとひっきりなしに、例えば「Hospital!!」「Town!!」など(信じられないほど活き活きと)行き先を連呼しているところに遭遇する(声かけられます)ので、もし自分の乗りたいバンなら少しでもジェスチャーをするとしっかり寄って来てくれます。

上手く乗り合いバンを使えば街の至る所に行けますが、注意点としては ①人が集まらないと出発しないのでたまに長時間待つことがある、②行き先を事前に伝えていないとバンを止めてくれない、③たまに値段をわずかに多く請求される、④日本の道路交通法では有りえない程、人を詰め込んで運転する、などです。ちなみに車は乗り合いバンもタクシーも全て日本の中古車で、現地ではex-japと呼ばれています。エンジンをかけた時に毎回「ETCカードが挿入されてません」と日本語で音声が流れるのは、とても面白かったです。カーナビなども日本語で、よく現地人から「英語に直してくれ」と頼まれることがありました。(ほぼ全て英語非対応なので結局変えられませんでしたが)

タクシーについては近くのガソリンスタンドやスーパーの駐車場などで常にドライバーのおじさん達がたむろしていて、近くを通るとすぐに「Taxi?」と声を掛けてくれます。相場は50クワチャ程度からで、メーター等は存在しません。また「Ulendo」というザンビアのUber的なアプリがあり、アプリで配車することが可能で、金額も事前に正確にわかります(それほど白タクの言い値と変わらないので、道端のタクシー運転手も割とdecentな値段を提案してきていることがわかります)

その他、長距離の移動ではバス、飛行機、鉄道やヒッチハイクも利用可能です。長距離バスは圧倒的に安価ではありますが、あまり整備されていない道を長時間乗る必要があるため体調を万全にして臨みましょう。

また注意点としては、バスに限りませんが近年のザンビアでの交通事故多発の影響を受け、夜10時以降の運転が禁止されているそうで、Livingstoneで一緒になったメキシコ人の友人も夜10時でいきなりバスが止まり、真冬の寒さの中バスで一泊させられたという話を聞きました。(同じ目に、僕と一緒に行った千葉も遭ったとのことでした。お気を付けください。)飛行機はその点、値は大幅に張りますが快適に移動できるかと思います。また南アフリカやUAEへの飛行機もルサカより飛んでいます。

ちなみに空港の名前(ケネス・カウンダ国際空港)はザンビアの初代大統領であるケネス・カウンダより命名されております。その他、日単位で遅延する可能性があるがバスと同等の値段で快適(ベットがある)に移動できる鉄道も利用できますし(ルサカ発ではありませんが有名なタンザン鉄道でタンザニアに向かうことも可能です)、ヒッチハイクはアフリカ南部では非常に一般的なので、経験という意味もかねて挑戦してみると面白いと思います。

›休日の過ごし方

ルサカはそれほど観光の町ではないので、見るものはそれほど多くはありません。街中を歩いたり、地元のマーケットを散策してみるのは面白いでしょう。町中に複数存在するshopping mallもすぐ飽きるかもしれませんが一見の価値はあります。

またNational Museumはザンビアの歴史や人々の生活の様子、中国資本によって建設されたタンザン鉄道に関する展示などがあり個人的には楽しかったです。また少し足を伸ばすとKabwata Cultural Village (という名のお土産屋さんの集合体、かつここのお土産はアフリカ南部全土で手に入りますし、生産地はDRCだったりZimbabweだったり全然Zambiaのcultureってわけではないですが)やReptile Parkなどがあります。またもし時期的に祝日等がかぶさった場合は一日がかりの移動になりますが、Zambiaで最も有名な観光地であるLivingstoneに宿泊し、Victoria fallsに行くことができます。また僕たちは現地の日本人(大学関係者や大使館、JICAなど)と鍋を囲んだり、フットサルをしたりもしました。

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›その他Tips(外出時間・体調を崩したら・現地の営業時間・注意すべき現地の表現…)

  • 街灯が少なく、夜になると町中も真っ暗になるため、宿や同級生などから基本的に夜8時以降は出歩かない方が良いという話をされていました。外食等で夜出歩く必要がある場合は自分の車を持っている人に乗っけてもらうか、タクシー(Ulendoなど)を利用すると良いでしょう。
  • もし体調を崩したら、僕らは行きませんでしたが、現地のPrivate hospitalに行くのがお勧めだそうです。初診料が3,000円ぐらいですが、そこそこの医療(決して日本レベルではありません)が受けられるため、現地の駐在員の方々も利用するとのことでした。(この辺りは以前実習を行ったスリランカも同様であったため、Common wealthらしいと思ってしまいました、実際のcommon wealthの国々はどうなのでしょう)(現地病院はUTHが(ですら)Zambiaで一番の病院と聞き、行く気が失せました)
  • ザンビアのworking hourは基本的に8時から17時なので実習だけではなく、公のサービスなどのこの時間帯が営業時間となります。
  • 例えば午後の時間の表記について、5pmとは言わず、17(seventeen hours)といいます。Ex) We will meet you at 17 hours. これはその他のアフリカ南部の国でも同様でしたが、最初は戸惑いました。(17よりも、後ろのhoursに騙されます)
  • シャンプーが近くのスーパーには売ってません!大型shopping mallまで行かないと手に入らず、なぜかと聞くと基本的に男性も女性も髪「だけ」を洗うことはない(髪がチリチリで短いorないのでbody soapで体を洗っているのと基本的には同じとのこと、またwigをつけてドレッドヘアにしている人たちはシャンプーをつけて頭を洗わない(形が崩れるため、お湯を髪の根元に少しつけてマッサージする程度)から、とのことでした。質のいいものが必要な人は日本から持参しましょう。

5. 最後に

以上、簡単ではありますがZambiaのUTHでの臨床実習に関して報告させていただきました。ここまでお読みくださりありがとうございました。少しでも来年以降のアフリカへの留学を志す学生の一助となるとともに、そうではなくともアフリカでの生活や実習に単純に興味のある皆さまにとって、参考となれば幸いです。最後に別な目的で作製した短いエッセイを載せました。全体的にとても冗長なエッセイとなってしまっておりますが、最後までお付き合いいただければと思います☺

【将来医師となる未来に向かって】

(フラテ100周年記念誌 寄稿文 原案より抜粋)

ザンビア滞在中、このようなことがあった。世界三大瀑布の一つであるVictoria Fallsの玄関口、Livingstoneの街中を歩いていると手作りの腕輪や自作の絵画を5-10USドルで買わないかと声をかけてくる同じくらいの年齢の男性がいた。観光地を歩いているとこの手の経験は幾度となくするし、特に構うこともなく立ち去ろうとすると、「自分は朝から何も食べていない」「自分には小さい子がいる」と言ってくる。この類の話もよく聞くので普段であれば構うことはないが、お金を渡すのではなく夕食を奢って一緒に話を聞きながらご飯を食べるのはどうだろうと思い、試しに夕食代を出すので家まで連れてってくれと提案してみた。すると彼は不意をつかれたようだったが「No Problem!」と快く承諾してくれた。

一大観光地も30分も中心地から離れると想像もできないような貧しいコンパウンドが広がる。街中に溢れる子供たちが行く先々で遊んでくれと寄ってきたり、仕事のない若者が屯していて、大麻片手にジロジロとこちらを見てくるのを横目にしつつ、薄暗い道を街灯もない中歩いて行った。途中、ザンビアの伝統料理であるNshimaと鶏肉、野菜を今晩の夕食として2 USドルで買って帰る。「あそこに見える家は家賃が月50 USドルで電気と水があって羨ましい」そんな話を聞きつつ彼の家に到着した。彼の家は日本のトイレくらいの大きさの泥でできた建物で、中では奥さんと2歳の子供が待っていた。「家賃が月35 USドルで今月はまだ払えず、いつ街中にいるようなホームレスになるかわからない」という話をしながら、「電気は高いから」と火をくべてくれる。

ポリタンクに汲んである水で手を洗い、先程のNshimaを家族と自分とで分けて食べながら、親は覚えていない時に亡くなったこと、HIVで甥や親戚が子供のうちに亡くなったこと(よくあるとのことだった)、コレラが流行して近所で死者が多数出たことなどを教えてくれた。今日一食も食べていないというのは本当の話らしく、わずか2 USドルほどの夕食であったが家族から大変感謝された。「仕事がないからといって街中で屯するのでは状況は何も変わらない、せめて自分のできることを」と観光客相手に僅かながらの稼ぎを得ているが、月収は日本円で7,000円にも満たないほどだそう。

帰り際、家族を持って貧しくも大変立派に生きる彼と恵まれすぎている自分に申し訳ない気持ちから手元にあった30 USドル程を渡すと彼はその場で泣き出し「God Bless You」と何度も感謝してくれた。帰り道、外は真っ暗だが彼は最後まで自分を宿に送り届けてくれ、その中で街の多くの人を紹介してくれた。お金がなく食べるものがない時にいつも助けてくれる商店の店主と話した際、「世界ではこんな状況で生活している人がいることを帰ってからも忘れないでほしい」といわれた時のことが脳裏に焼き付いて離れない。乾季ど真ん中のVictoria Fallsを間近で見るより、ずっと衝撃的で貴重な経験をした、そんな一夜であった。

Factfullnessというベストセラーがある。ビックデータ、統計学を駆使し、この数十年で世界の格差は大きく縮小し、貧困にあえぐ人口は大きく減ったという、とりわけ「アフリカ=貧しい」という偏見を抱く世の中に重要な示唆を与える書籍である。自分もたった短いアフリカ滞在歴しかないものの、その本の主旨を実感できるような機会に幾度となく遭遇した。約54カ国もあるアフリカ大陸に対して「貧困」というレッテルを単純にあてがうのは本当に誤りであり、言葉を借りると「Things are better than you think」である。

ただ、依然として今回出会った彼のような生活をしている人々も世界中に多くいる。そして半日のツアーに数万円を払う旅行者で溢れるLivingstoneからたった30分しか離れていないのに、彼らの様子を知る旅行者はほぼいないだろう。何とも不平等で、何とも自分は恵まれていて、何とも無知である、そんな様々な考えが浮かんでは消えた。

そんな世界で自分は生きている。国境の存在がどんどん希薄となり、人種、国籍、性別などの違いはその境目や差が様々な場面で取り上げられ世界が平等に繋がっていく一方で、富めるものとそうではないものの差が広がっている、そしてその差こそ十分に顧みられていない、そう感じるのは自分だけであろうか。そんな世界で自分は生きている。医者として、一人の人間として、彼と同じく「せめて自分のできることを」一生懸命して、少しでも世界に蔓延る「格差」に向き合いたい、そんな未来を描いたアフリカ滞在であった。

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