【海外留学報告】ヴェローナ大学(イタリア)山川 光哉

医学部医学科 山川 光哉
留学先:ヴェローナ大学(イタリア)
実習期間:2019年7月1日~7月12日(2週間)
留学の種類:北海道大学医学部医学科(医学教育・国際交流推進センター主導)トライアル派遣
留学時の年次:6年次

1. ヴェローナについて

ヴェローナはイタリア北部のミラノとヴェネツィアのちょうど中間地点に位置する。人口は約25万人で、街の中心部には古代ローマ時代の円形競技場(アレナ)があり、中世の町並みが残っている。ヴェローナ市街として世界遺産にも登録されている、大変美しい街である。コンパクトで落ち着いた街で、大都市や観光地化されている街と比べて治安も良いので滞在は非常に快適だった。

丘から望む街

街の中心にあるアレナ

2. 実習について

実習場所は街の中心部から2~3km離れたBorgo Trento地区の川沿いにある大学病院だった。科によってはBorgo Roma地区にあるもう1つの大学病院になる。2つの病院の違いとしては、Borgo Trento地区の病院は規模が大きく、急性期の患者を中心とした患者層で、外科系の科が多い。一方、Borgo Roma地区の病院は高齢者を中心とした患者層で、外科的治療が必要のない科が多いそうだ。

私はCardiology(循環器内科)で2週間の実習を行った。実習初日に教授に興味のある分野を聞かれ、Interventional Cardiologyに興味があると伝えたところ、病棟・ICU・カテーテル室を中心に実習することになった。

病棟では、レジデントが中心となって回診をするところをシャドーイングした。心不全や、心筋梗塞、たこつぼ心筋症、心房粗動などの患者から、TAVIやMitraClip後の患者などもいた。1人の患者にかなり時間をかけて診察しているということが印象的で、レジデント2人が回診カートに電子カルテ用のPCを載せて病室を回り、診察をして、その場でカルテ記載、指示出しなど行っていた。

ICUでもレジデントが中心となって回診するところをシャドーイングした。私が実習した病院ではICUの中でもさらに科ごとに分かれており、担当科の医師が患者を管理することになっていた。Cardiologyだけで8床あった。ICUには、心筋梗塞の患者を中心に、心移植後の患者などもいた。この病院では1960年代にイタリアの他の病院に先がけて循環器専門のICUができたそうだ。当時は主に除細動の適応となった患者の管理が中心で、1980年代になると、心筋梗塞の血栓溶解療法の適応となった患者が中心となり、1990年代後半から2000年代になると、テンポラリーやECMO、バルーンパンピングなどのデバイスが適応となった患者の管理が増えてきたそうだ。

カテーテル室は5部屋あり、循環器内科で主に使うのは2~3部屋だった。8時から14時がカテ室の定時らしいが、日によっては17時過ぎまでやっていることもあった。カテ室の中でみるよりは操作室でみることが多かったが、手の空いているレジデントがよく解説してくれた。1週目はCAGやPCI中心だったが、2週目になると1日に4件もTAVIをする日もあった。1週目はバカンス中のスタッフが多かったそうで、本当はもっと色々やっていると後から聞いた。カンファレンスにも出席する機会があったが、レジデントも含めて20名以上の医師がいた。

また、空き時間に、手持ちぶさたにしていたレジデントにお願いして、カテ室の隣にある救急科を見せてもらうこともできた。私が実習した病院では、救急患者はRed、Yellow、Green、Whiteと重症度・緊急度によってトリアージされ、それぞれの部屋で診療を待つことになる。Redの部屋はShock Roomと呼ばれ、心肺停止などの最重症患者が入る部屋である。部屋の隣にはCTや手術室があり、即座に検査や手術ができるようになっていた。以下、Yellow、Green、Whiteと緊急度・重症度ともに低くなっていくが、Greenの部屋はガラス張りの部屋で、中で椅子に座って待っていられるような人がたくさんいることから、レジデントたちの間では冗談交じりでAquariumと呼ばれているそうだ。Whiteは救急科にかかる必要のない患者ばかりらしい。実際、私が見学したときもひっきりなしに救急車が到着して、廊下まで患者が溢れていた。

対岸から望む病棟

外来棟

病院の正門

3. 生活について

● 言語

もちろん医師も患者もイタリア語で話している。全員というわけではないが、英語を話せる医師を中心に教えてくれるので、実習中は特に困ったことはなかった。

インターフォンを押して中から扉を開けてもらわないと入れないところが何箇所かあるのだが、教えてもらったイタリア語を呪文のように唱えると入れてもらえた。

生活する上では、観光地ではないスーパーやパン屋の店員などは英語を話せない人も多い印象だった。

● お金

物価はミラノと比べれば安く、スーパーマーケットで買い物していればそんなにお金はかからないと思う。特に野菜や果物は日本よりも安かった。

外食するとヴェローナでも日本より高い。マクドナルドやバーガーキングでも日本より高かった。病院の売店では4ユーロくらいあれば、お昼ご飯のサンドイッチを買える。

● 交通

私は成田空港発ミラノ・マルペンサ空港行きのアリタリア航空の便(1ヶ月前に予約し、成田-ミラノ間のみで約12万円)を利用した。マルペンサ空港からミラノ中央駅まではマルペンサ・エクスプレスで52分(実際は遅延して1時間くらい、13ユーロ)かかる。ミラノ中央駅からヴェローナ ポルタ・ヌオーヴァ駅まではトレニタリア社のフレッチャロッサという新幹線のような列車で1時間少々かかる(26ユーロ~)。マルペンサ・エクスプレスもトレニタリアもオンラインで購入して、スマホにeチケットが送られてくるので便利だった。

ヴェローナ ポルタ・ヌオーヴォ駅から宿までは荷物が重かったのでタクシーを利用したが、3kmで14ユーロだった。ヴェローナ市内では、Verona Bikeというレンタサイクルが便利だった。

中心部にあるサイクルステーション

日本語で操作もできる

● 宿泊

渡航前にヴェローナ大学の職員に寮を貸してもらえないか打診したが、短期滞在用の宿泊施設は無いという回答だった。

病院の近くの宿泊施設を教えて欲しいと頼んだところ、病院から徒歩15分程度のところにある、キッチン付きの長期滞在可能なレジデンス アディージェというホテルを紹介してくれた。weeklyプランの素泊まりで1泊60ユーロほどするが、2~3人宿泊できる部屋なので一緒に渡航する人がBorgo Trentoの病院だった場合は共同生活も可能だと思う(Borgo Romaの病院だった場合は無理そう)。

治安の良さそうな落ち着いた住宅街の中に位置し、近所にはスーパーマーケットもあり、住環境は良いと感じた。ちなみにホテルの中にピアノのある会議室があり、日中はそこが音楽教室になっているようで、実習が終わって宿に帰ると毎日のようにピアノの音と美声が響いていた。

● 通信

通信手段としてスマートフォンが必要だと思うが、私は日本のamazonでイギリスthree社のプリペイドSIMカード(12GB通信可能で2150円)を購入して持っていった。3G回線にしか繋がらないと書いてあったが、イタリアでは国際ローミングでWind社の4Gか3G回線かイタリア3(tre)社の3G回線に繋がった。建物の中などでは繋がりにくいことも多かったが、イタリアではそんなものらしい。現地で購入するなら、TIM社が最も繋がりやすいそうだ。そちらは20ユーロで15GB通信できる。

病院内ではfreewifi@veronaという公衆WiFiが利用可能だった。認証のためにVerona SmartAppをインストールしておくといい。

● 服装

実習中は日本で使っているスクラブを着ていた。イタリアの医師たちは緑や水色のスクラブや、白いTシャツに白いパンツを着ている人が多かった。学生もシンプルな私服の上に白衣を着ていた。

外気温は7月上旬だと最高気温35度の日もあり、日没は21時以降でかなり暑い日が多かったので、初日はポロシャツとチノパンで行ったが、それ以降は半袖短パンで病院に行ってスクラブに着替えていた。

4. その他

● 渡航までの手続き

2018年8月
ヴェローナ大学の医学部担当者の連絡先を教えてもらい、実習を希望する旨のメールを送る。この時は4週間の滞在予定で小児外科と整形外科での実習を希望したが、小児外科は受け入れ不可だった。整形外科は受け入れ可能とのことだった。受け入れ可能だった場合は受け入れ科の教授や秘書の連絡先を教えてもらえるので、直接連絡を取ることになる。

2018年10月
循環器内科の受け入れが決まる。
循環器内科と整形外科の秘書に実習期間についてのメールを送った。循環器内科からはすぐに返信があったが、整形外科からは返信がなかった。

2019年3月
医学部担当者から実習にあたって、当地の保険に加入するように指示される。その後、保険の加入のために、循環器内科の教授のサインの入ったAuthorizationの書類を作ってもらった。
また、医学部担当者に宿泊施設を探す際はInternational Relation Officeに相談するように言われる。
この頃、医学部担当者には整形外科で実習可能だと言われていたが、整形外科に何回かメールを送っても返信がなかったことと、後述のように宿泊施設を見つけるのに難渋していたため、当初は4週間の滞在予定だったが、2週間の滞在に変更した。

2019年4月
International Relation Officeに宿泊施設について相談したところ、短期滞在用の寮は無いので、airbnbで探すか、erasmusというところに連絡するように言われた。しかし、erasmusからは返信がなかった。再度、医学部担当者に相談したところ、同僚のWelcome Officeの人が宿泊施設を紹介してくれることとなり、今回の宿泊先が決まった。

2019年5月
医学部担当者にその他に必要な手続きはあるか尋ねたところ、実習に関することしかわからないから、全学の担当者(ISU service)に連絡するように言われた。結局、その他に必要な手続きはなかった。その後、5月末に6月末出発の航空券を購入した。
日本人がイタリアに渡航する際は、90日未満の滞在なら留学でも観光でもビジネスでもビザは不要(大使館に確認済み)。全学の担当者はそのことを知らなかったので、ビザ取得のために正式なInvitationの書類を作る必要があるか尋ねられた。

● 保険

実習のためにAllianz社の保険に加入するように言われる(6.96ユーロ)。詳しい手続きは担当者が教えてくれる。また、一般的な旅行保険に加入した。

● 予防接種

大学から特に求められることはなかった。一般的に旅行する際に必要なものをすれば良いと思う。

● 提出書類

以前、UAE大学に行った時とは異なり、CVや成績証明書、推薦書などといった類のものは要求されなかった。

● 役に立つもの

トレニタリアのサイト:電車のeチケットが買える。
Trenit!(アプリ):電車の運行状況がリアルタイムでわかる。時刻表検索もできる。プラットフォームがわかるのがとても良かった。
Verona SmartAPP(アプリ):freewifi@veronaにアクセスするために必要
コンタクトレス決済対応のクレジットカード:日本だとコンビニくらいでしか普及していないが、カードを端末にタッチするだけで決済できる。マルペンサ・エクスプレスもタッチするだけで乗ることができる。

●注意したほうが良いこと

観光地ならどこにでもミサンガなどの物売りがいる。治安が良いヴェローナでさえも、「小銭が無いから両替してくれないか。」と言って旅行者の財布を出させてスリを狙う者もいる。

また、ミラノ・マルペンサ空港では、黒人が日本人を狙って「タナカさんに電話をかけたいから手伝ってくれないか。」と言って、公衆電話のところに連れて行き、クレジットカードを使わせてスキミングや似たカードとすり替えを狙う者もいる。私はその両方に遭遇したが、手口を知っていたので被害には遭わなかった。冷静に考えて、イタリアで困っている時に日本人に助けを求めること自体が不自然だし、財布を出させる行為はほぼ詐欺やスリだと思っていいと思う。渡航する前にそういった類の犯罪の手口は調べておこう。

5. 感想

今回、ヴェローナでの実習を通じて、多くのことを感じ、考えるきっかけができた。私の分かる範囲では、大学病院では日本と変わらない水準の医療が行われており、前述のようにICUが科ごとに別れていることや、救急科のシステムが大変興味深かった。一方、偶然お話する機会のあったイタリア在住の日本人の方によると、公立の病院だと足が痛くて病院に行っても長時間待たされるし、レントゲンなどの検査もまた後日、といったこともあるそうで、日本の医療制度は素晴らしいと仰っていた。イタリアでは日本と比べると、地域の病院まで一定水準以上の医療が行き届いているというわけではなさそうである。

また、多くの医師と話す機会もあり、それが最も良い経験になった。特に教授が、「イタリアでは、若い医師では英語が話せる人も最近はそれなりにいるが、年配の医師は英語が話せない人が多い。(教授自身がアルゼンチンからの移民でありながら、イタリアでポストを獲得したという背景もあり)言語ができるかどうかということが、医師や研究者として、よりcompetitiveになるためには必要だ。」といった旨のことを仰っており、印象に残っている。

最後に今回の渡航にあたって、北海道大学、ヴェローナ大学の教職員の皆様には大変お世話になりました。皆様のおかげで大変貴重な経験をすることができました。そして、この報告書が来年以降ヴェローナへ向かう皆さんのお役に立てばと思います。(終)