【海外留学報告】ソウル大学校(大韓民国)戸田 喜子

医学部医学科 戸田 喜子
留学先:ソウル大学校(大韓民国)
実習期間:2019年5月13日~6月8日(4週間)
留学の種類:北海道大学医学部医学科(医学教育・国際交流推進センター主導)トライアル派遣
留学時の年次:6年次

1. 事務手続き

A. 実習の申込登録・確定までの流れ

まず、5年次の4月に開催された海外派遣の説明会では、韓国の大学は正規派遣の慶尚大学のみでした。ですが、以前ソウル大学も派遣先に入るかもしれないというお話を伺っていたので、ソウル市内で医学部がある大学をウェブで調べ、6月頃にソウル大学と高麗大学に直接コンタクトを取りました。ソウル大学からお返事をいただき、ウェブページに記載されている必要書類を揃えて9月中に提出をとのことでした。ちなみに先方から提出を求められた書類は、

☐ application form(出願書類。志望科や期間、出願理由などを記入)
☐ curriculum vitae(履歴書のようなもの)
☐ official letter from associated Dean for academic affairs
☐ official transcript of academic records
☐ immunization record form
☐ copy of passport

以上の6点でした。
Official letter from Deanに関しては、吉岡先生のサインをいただく前に(8月中)、ソウル大学にメールで送り、十分であるとのチェックを受けてから医学科教務ご担当の方にご用意いただきました。
先方との行き違いがあり(9月に提出しましたが、韓国の秋夕がありお返事が来なかった)私の書類自体は10月中旬頃に受理され、その後希望した診療科のほうでチェックを受けました。同じくソウル大学に出願していた中川さんから遅れること10日ほど、12/12にアクセプトメールを受け取り、受け入れが確定しました。
日程に関してアクセプトレターにミスがあったので、正式な日程が出たのが1月初めで、1月末に大学のゲストハウスを押さえました。ゲストハウスに関しては、コーディネーターの方が案内をメールで送ってくれます。大学のゲストハウス以外にも、いくつか宿舎の情報をURLで送ってくれましたが、私は1つも開けなかったので、他にどんなところが候補にあったのかはよくわかりませんでした。ゲストハウスの予約の仕方も、コーディネーターの方のメールにあるのでわかりやすいです。

B. 実習場所

ソウル大学のSeoul National University HospitalのPlastic and Reconstructive surgeryで、4週間(5/13~6/7)実習を行いました。ただし先方から、平日にオリエンテーションを行いたいと言われ、5/10(金)にOffice of International Affairsの方でオリエンテーションを行いました。

C. 航空券

利用空港は新千歳空港と仁川国際空港です。
• 往路(2019/5/9):大韓航空
• 復路(2019/6/8):大韓航空

D. 宿泊場所

Global Centerという、ソウル大学医学部とソウル大学病院のすぐ近くにある大学のゲストハウスを利用しました。地図で見るとかなり近く見えるのですが、大学路という大通りを渡らないといけないのと、病院の敷地がとても広いので、実際には徒歩10分はかかるかと思います。
空港からのアクセスですが、空港からソウル市内へのアクセスは空港鉄道AREXかリムジンバスがメインだと思います。我々は空港鉄道を利用しました。
空港鉄道は空港とソウル駅をノンストップで結ぶ直通列車(指定席)と、各駅停車の一般列車があります。直通列車は所要時間50分程度ですが本数が30~50分に1本とやや少なく、一般列車は所要時間65分程度で座れるとは限りませんが、10~15分に1本程度あるので時間が合わせやすいです。また現地の交通カードであるT-money cardも利用できます。
SNUHとゲストハウスの最寄り駅は地下鉄4号線の恵化(ヘファ)駅で、ソウル駅から6駅目で、15分程度で到着します。乗り換えもソウル駅で1回だけなので、アクセスは良好です。
一応チェックインは20:00までなのですが(玄関にロックがかかるので)、予定より時間がかかって20:00を少し過ぎにもかかわらず、管理人のおじさんが開けてくれました。管理人のおじさんは2人いて、一人は日本語も話せます。
ゲストハウスは広めの個室で、シャワーとトイレも各部屋についています。トイレットペーパーやシャンプー、石鹸などもなくなったら補充してもらえます。タオルも2本あり、毎日交換してもらえます。これらは掃除のおばさんが、午前中に部屋に入ってやっておいてくれます(日曜日などおばさんがお休みの日はタオルの交換などはありません)。お部屋の鍵は4桁の数字を入力する方式でした。ハンガーは前の学生が置いて行ったものがたくさんありますし、洗濯洗剤も余っていたらあるかもしれませんが、自分で用意していったほうが無難かと思います。韓国は硬水なので、柔軟剤を使わないと洗濯物はバリバリになりますので注意したほうがいいかと思います。

E. ワクチン

immunization record formの提出があり、HBV、HAV、麻疹、風疹、流行性耳下腺炎、結核のスクリーニングがありました。病院実習に入る前に抗体価を調べ、ワクチン接種を行っていたので、その時の資料を持って近所のクリニックの先生にフォームの記入をお願いしました。フォームの記入だけではなく、同じクリニックでHAVの接種と、結核のスクリーニングを行いました。
HBVについては、実習に入る前に1クール接種して抗体があったのですが、弱くなっていたため、渡航前に2クール目を接種しました。

F. ヘルスチェック

ヘルスチェックは特にありませんでしたが、BCG接種のためツ反が陽性になるので、結核に対する質問票の記入がありました。

G. ビザ

ビザは必要ありませんでした。

H. その他重要な事務手続き

大学のゲストハウスは空室に限りがあるようなので、12月頃に受け入れが確定し、日程が決まった時点で申し込みました。また、実習のスケジュールや初日の集合場所、服装や持ち物などは、コーディネーターの方からではなく、直接自分で診療科の先生にコンタクトを取って、教えていただく必要があります。
我々の場合、申請していた実習期間と、先方から送られてきたアクセプトレターの日付が一週間ずれていたりしたので、単なるミスなのか、受け入れ日程として先方が変更したのかなどを再度問い合わせる必要がありました。

2. 実際に実習にかかった費用

A. 交通費

渡航に際して必ず必要になる交通費の合計は、約43,220円でした。内訳は下記の通りです。
• 新千歳空港と仁川国際空港の往復航空券代金:40,210円
• 自宅最寄り駅から新千歳空港までの往復交通費(JR):880円×2=1,760円
• 仁川国際空港から滞在先までの往復交通費:往路8,000KW、復路約4,500KW
(往路は直通指定席利用、復路は各駅停車の一般列車を交通カードで支払ったため、往復で交通費が異なっています)

B. 宿泊費

• 5/9~6/8(30泊31日):750,000KW(日本円で約75,000円)
宿泊費は実習開始から1週間以内に、指定された銀行口座(ソウル大学のシンハン銀行の口座)にKWで支払うことになっていました。
空港に到着した初日1泊:900NTD=3,600円

C. 生活費

• 食費
食費に関しては、ゲストハウスは食事がついていないので、基本的に3食外食になります。コンビニは日本ほど品ぞろえが豊富ではありませんが、海苔巻きやおにぎりなどはあるので、朝早い時には利用したり、病院の食堂では4,000KWでお昼が食べられたりします。飲食店で食事をすると、一食当たり7,000KW~10,000KW程度かかりますので、コンビニ+食堂+外食と仮定すると、1日当たりの食費は15,000KW程度かと思います。
• 日用品
日用品に関しては、韓国にはダイソーがあるので(100円ではないものも多いですが)、荷物になりそうなものは現地で調達しました。日本では事前に、常備薬一式と洗濯ネットなどを購入していきました。
• 通信料
私は日本で受け取り・返却の可能なWi-Fiルーターをレンタルしていきました。
現地の空港で借りる方が安いのですが、デポジットを取る会社が多かったのと、帰国前に返却するのがバタバタするかなと思い、日本で借りていきました。
通信量無制限30日分に保証パックを加えて、18,600円でした。

D. その他手続きにかかる費用

ビザについては、札幌の韓国総領事館に確認して、必要ないとの回答でした。
ソウル大学のコーディネーターの方にもメールで問い合わせましたが、必要ないとのことでしたので、取得しませんでした。
海外旅行保険については、学研災の付帯海学を利用しました。こちらの保険料が1か月で8,240円でした。
ワクチンについては、日本で病院実習に入る際に必要なHBV、麻疹、風疹、流行性耳下腺炎、水痘に加えて、A型肝炎ウイルスと結核のスクリーニングがありました。
それに加えてHAVワクチンと、結核スクリーニングとしてツベルクリン反応と胸部レントゲンを受けました。
また、提出フォームは医師が記入するものだったので、文書作成料がかかりました。合計38,600円です。内訳は下記の通りです。

• HAV:21,000円(7,000円×3回)
• ツ反と胸部レントゲン:4,100円
• HBV:12,000円(6,000円×2回。本来3回で1クールですが、3回目は後日)
• 文書作成料:1,500円

3. 実習内容

形成外科の実習は、スケジュールがかなりざっくりとしていて、月曜と金曜の朝7時からのセミナー・カンファレンスと、月曜の夕方5時からのジャーナルクラブ以外の時間は手術見学がメインでした。たまに火曜日の朝に病棟カンファがあったり、現地の学生さんに誘われて縫合実習を行ったり、教授の一人が空き時間があるからとレクチャーをしたりしてくれましたが、頻繁ではありませんでした。個人的には外来も見学したかったですし、局麻で行う日帰りの手術なども見たかったのですが、形成外科は患者さんのプライバシーに配慮が必要なことが多いので、留学生の見学は認められませんでした。その代わり手術件数はとても豊富で、北大では曜日によって診療科へのオペ室の割り当てがありますが、ソウル大では形成外科としては毎日オペがありました。更に隣接して小児病院もあり、そちらでも毎日形成外科のオペが行われていたので、大人の手術がメインの本館と小児病院を2週間ずつ回らせていただきました。
オペの内容としては、顔面の再建や乳房再建、小児では唇顎口蓋裂や先天性母斑症のオペが多かったです。中でも多かったのは乳房再建で、北大とは異なり、形成外科が腫瘍の切除やリンパ節生検から始めて、再建して終了という手術があったので、8時間予定の大手術になることも多かったです。

ソウル大学には、医学生やフェローの先生方が世界中から集まって来ていました。月毎に、その月に実習を開始する学生に対してのオリエンテーションが行われるのですが、それらは全て英語ですし、留学生同士のやりとりも全て英語です。もちろん日々の診療やオペの間は、病院では韓国語が使用されますが、先生とお話しするときや留学生向けのレクチャー、現地の学生さんが企画してくれる交流会などは全て英語なので、想像していたよりも英語を使う機会が非常に多かったです。解剖用語やオペの術式などは多少勉強して行きましたが、留学生や現地の学生さんともっと話をするために、もっと英語を勉強して行けば良かったなと思いました。また、日本の医学部ではどんな実習があるのか、卒後のキャリアはどうなっているのか、どの診療科が人気なのか等が話題に上ることが多かったので、質問されたときに語れるように準備していけばよかったと思います。

4. 留学を終えて後輩学生へアドバイス

今回の派遣に関して、私が困ったことと、改善点について述べようと思います。

A. 留学前に最も困ったことは、実習病院のうち1つが、想像よりずっと遠い(滞在先のGlobal Houseから)ところにあったということです。派遣の2か月ほど前の3月初めには、診療科からアクセプトしてもらい、宿泊先も確保し、航空券も取り、あとは1か月程前になったら診療科の先生に直接連絡して、スケジュールや初日の集合場所を問い合わせるのみという状況でした。3月初めにコーディネーターの方に連絡を取り、診療科の先生の連絡先やスケジュールについて問い合わせたところ、「あなたは最初SNUH(Seoul National University Hospital)に配属され、その後SNUBHに移って実習を始めることになりますが、具体的な日程は診療科の先生に直接問い合わせてください」と言われました。私はSNUBHに関して詳しく知らなかったのですが、ソウル大学病院の近郊にある分院に行くことになるんだな、という程度で、せいぜい30分くらいで着くだろうと考えていました。
ところが、4月に入って正確なSNUBH(Seoul National University Bundang Hospital)の場所を調べたところ、滞在先から電車やバスで1時間半~2時間程度かかる場所にあることを知り、大変驚きました。Bundangというのは盆唐市というソウル近郊の都市のことで、交通費も往復すると1500円ほどかかるような場所にありました(ただ、ソウル市内の地下鉄・バスはとても安くて便利なので、実際には乗り継ぎ割引などでそこまではかからないかもしれないです)。
そこで慌てて、「SNUBHは滞在先から遠く、費用的にも時間的にも通うのが大変なので、できればSNUHの実習期間を延ばして欲しい」と診療科の先生にお願いしたところ、SNUHで4週間の実習を行うことを認めていただけました。
もしSNUBHに行くことになれば、新たに近くに宿泊先の手配をしようと考えていたので、実際とても焦りました。SNUBHに行くにしても、配属される日付が全くわからなかったので、向こうからのお返事次第の状況でしたし、ソウル市内と比べて宿泊先があまりありませんでした(韓国語探せばコシウォンやコシテルなども出てきますが、1か月単位の契約が多いですし、電話での問い合わせのところが多いです)。
北大病院の関連病院は道内各地にありますが、分院というのはないと思いますので、留学生が外病院に行くことは無いと思います。そのため、ソウル大学がいくつか大きい病院を持っているのは知ってはいても、分院メインの配属になるかもしれないとはあまり考えていませんでした。正規派遣のシンガポール国立大学などもそうだと思いますが、実際に自分が配属されるのはどこの病院なのかを教えてもらってから、宿泊先を探すと良いと思いました。私の場合、コーディネーターの方が勧めてきたのがSNUHの近くにある大学のゲストハウスであったこと、他にお勧めされた滞在先もその近辺であった(と、思われます。実際にはほとんどのURLが開けず、参照できませんでした)ことから、これほど遠い病院に配属されるとは想像もしていなかったため、本当に驚きました。反省点としては、SNUBHに配属になると知らされたときに、すぐに場所を調べるべきだったと思います。そうすればこれほど慌てることもなかったと思います。一方で、渡航前であったため、色々と対策を考えられた点は良かったと思いました。私がいる間に、5月にはシンガポールの大学から2人、フィリピンの大学から2人、6月にもシンガポールの大学から1人、中国の大学から1人が、一緒に形成外科をローテートしていました。彼らのスケジュールから考えて、恐らく、形成外科を2週間回ると、1週間はSNUHでもう1週間はBundang病院での実習になり、4週間回ると2週間をSNUH、1週間をBundang病院、もう1週間をBoramae病院という3つの病院を回ることになると思います。

B. 先方の事務担当の方は、国民の祝日にはお休みするので、その期間はオフィスが閉鎖されます。その間、1週間ほどメールを読んでもらえなくなるので、余裕をもって連絡を取り合うと良いと思います。もちろん日本とは休日が異なるので、そちらもチェックするといいかもしれません。

C. 出願書類はメールに添付してやり取りしており(応募要項などのページには原本郵送となっていましたが、メールでもいいと言われました)、最初はファイルにロックをかけて送ったのですが、一向に見てもらった気配がなかったため、結局ロックなしで送ったら読んでもらえました。

D. 留学生はオリエンテーションで裏にQRコードがついたネームプレートを渡されるため、QRコードで入れるところ(病棟など)は入れるのですが、そのほかに職員の方や現地の学生さんの所持するIDカードが無いと入れないところがかなり多いです。私の場合オペ室に毎日出入りしていましたが、まずオペ室がIDカードもしくはIDとパスワードの打ち込み無しでは入れませんでした。それから、IDが無いと医学部の図書館が使えないのも困りました。コーディネーターの方に事前に言っておけば用意してくれるかもしれないので、トライする価値はあるかと思います。

E. 私自身、英語力は大学受験をピークにどんどん低下しており、全く自信がありませんでした。実際、日本で暮らしている分には英語ができなくても何ら困ることがないので、あまり勉強もしていませんでした。しかし、留学準備となると、メールのやりとりも、履歴書や応募書類も全て英語なので、英語でのメールの書き方をネットで調べるところから始めました。今でも英語でメールを書くのはストレスではありますが、基本的な様式には慣れたので、そうしたことも今回の留学によって身についたものかなと思います。しかしメールはじっくり時間をかけて読んだり書いたりができますが、会話だとそうはいかず、1対1ではなく大勢で話しているときは殊に自分の英語力不足を実感し、もっと話せたらと思いました。留学を検討している皆さんには、英語で誰かに話したいと思えることと、自分が伝えたい内容をきちんと伝えられる英語力のふたつは、是非身につけていただきたいと思います。